IoTで太陽光発電施設をリモート監視
IoTを活用してソーラー発電施設を遠隔監視することができるクラウドサービス「ソーラーモニター」をマレーシアで販売するに至るまでの経緯
取り扱いするクラウドサービスのなかでも「ソーラーモニター」はかなり特殊な分野に位置づけられます。ソーラーモニターは太陽光発電施設をモニタリングできるクラウドサービスですので、マレーシアの再生可能エネルギー分野での国家戦略や太陽光発電業界の動向に大きく影響されることになります。そのため、まずはマレーシアのエネルギー政策、再生可能エネルギーに関する法律や組織、業界の動向、事業者などを調査するところから始まりました。
太陽光発電とモニタリング事業について市場調査
第一段階として、調査項目を以下のように設定して、マレーシア政府が発表している内容や各関連組織が発行している資料を読み込み、情報をまとめるところからスタートしました。第一章:マレーシア エネルギー政策についての調査
- 1-1. エネルギー政策の経緯
- 1-2. エネルギー関連基本政策
- 1-3. エネルギー政策に関わる組織
- 1-4. エネルギー政策に関わる規制・助成制度
- 1-5. 再生可能エネルギー政策 - 関連する法律規定
- 1-6. 国家再生可能エネルギー政策および行動計画 (NREPAP)
- 1-7. 国家再生可能エネルギー政策および行動計画 (NREPAP) -再生可能エネルギー導入目標
- 1-8. 持続可能エネルギー開発庁 (SEDA)
- 1-9.固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)
- 1-10.固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff) 2014年、2015年の状況
- 1-11.固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff) 申請手順
第二章:太陽光発電事業の事業参加者、およびビジネス状況についての調査
- 2-1. 2014年の太陽光発電設備のFIT申請数と発電開始設備数
- 2-2.太陽光発電設備の主要パワコンメーカーとモジュールメーカー -1
- 2-3.太陽光発電設備の主要パワコンメーカーとモジュールメーカー -2
- 2-4. 日本からの参入事業者
- 2-5. PVサービスプロバイダーリスト
- 2-6.業界団体の参加企業リスト (66社)
- 2-7.太陽光発電遠隔監視サービス提供企業とその内容 - 1
- 2-8.太陽光発電遠隔監視サービス提供企業とその内容 - 2
- 2-9. 通信設備機器(NTTFOMA回線のような無線回線を使用した機器)の有無と価格(SIMの価格を含む)、月額通信費
- 2-10. 有線設備の有無と価格、月額通信費
- 2-11. マレーシアの系統の周波数と電圧
- 2-12. マレーシアの平均日照時間
第三章:今後の市場参入に向けて
- 3-1. マレーシア政府が掲げるロードマップ
- 3-2. マレーシアで開催されるエネルギー関連の展示会: IGEM
- 3-3. Clenergy Malaysiaについて
- 3-4.ソーラーパネルが多く設置されている地域および通信回線のカバレッジ
- 3-5.大手(有力)のサービスプロバイダ 10社 (マルチプラットフォーム対応)
- 3-6.大手(有力)のサービスプロバイダ 参考データ
- 3-7. M2Mの通信機器の値段、マレーシアの電気料金 (補足資料)
- 3-8.太陽光発電 関連ビジネス 参入についてまとめ
調査結果を受けて、進出を決定
結論としては、マレーシアの太陽光発電事業の将来性とその事業の成長に合わせて設備や機器をモニタリングする需要の拡大が見込まれることが分かりましたので、具体的な事業展開に向けて舵をきることになりました。 マレーシアでモニタリング事業をスタートするため、太陽光発電事業の手掛ける協業パートナーの募集を開始。候補となる事業者をリストアップして、アポイントを取得し1件1件訪問して回りました。 また、広範囲に業界情報をつかむこと、提携サービスプロバイダの募集、ポテンシャル案件の開拓などを目的に展示会にも個別ブースを設けて出展いたしました。クアラルンプール展示会 IGEM に出展
IGEM 2015 (International Greentech & Eco Products Exhibition & Conference Malaysia)マレーシアが 推進するグリーンテクノロジーのプラットフォームとなる国際見本市・会議
IGEM出展によって、パワコンメーカー(インバーターメーカー)、サービスプロバイダや施工会社、MPIA業界団体、大規模ソーラー発電所などかなり多くの太陽光発電業界関係者と短期間でコネクションを作ることができました。
実はその後、正式にパートナーとなる会社は、同じIGEMに出展している会社でした。来場客だけではなく、出展社とのパイプができたことも成果と言えると思います。
IoT関連デバイスを現地調達
マレーシアでの太陽光発電業界とのコネクションを広めることと平行して行っていったのが、IoT関連デバイスの現地調達ルートの確保です。太陽光発電施設を遠隔監視するためには、現場に設置されているインバーター(パワコン)、日射計、風速計、温度センサーなどの機器からデータを取得して、日本で運用管理されているクラウドサービスに送信する必要があります。日本とは勝手が違うなかで、各種機器の調達、通信回線との接続、データ取得とクラウドへの送信までは試行錯誤が続きました。業界団体MPIA (Malaysian Photovoltaic Industry Association)へ加入
IGEM (International Greentech & Eco Products Exhibition & Conference Malaysia)でコネクションができた団体の1つが太陽光発電業界の非営利団体MPIAです。後日、MPIAの事務所を訪問して、TK International Sdn Bhdとして正式に加入。このことで業界関係者とのネットワークや業界情報を効率的に入手できるようになっています。パートナー(リセラー)の募集
IGEM出展や業界団体への加入でコネクションが増え、有益な情報入手が可能となりました。次はいよいよマレーシアでの販売パートナーを探して、リセラー契約を交わし、マレーシアに販売していくことになります。有力なパートナー候補にコンタクトをとって、提携交渉を継続した結果、MPIAでも幹事企業を務めているサービスプロバイダとの契約に至りました。ついに、マレーシアで運用開始
市場調査から始まり、マレーシアの太陽光発電業界とのコネクションづくり、IoTデバイスの現地調達、現地サービスプロバイダとの販売店契約を経て、ついにマレーシアでの販売を開始しました。提携先の提携先サービスプロバイダが受注した発電施設にあわせてモニタリングする機器を販売、設置し、クラウドサービスのSolar Monitorと接続しています。
ソーラーパネルは工場の屋根の上にあることが多いので、中には急な階段やハシゴを登っていくこともあります。ソーラー発電施設に納品するために、パートナー企業と様々な現場を回りました。現在ではマレーシアでいくつもの太陽光発電施設をモニターしています。
今後の事業計画について
マレーシアでの固定買取制度については制度変更により終了となりましたが、代わりに発電した電力を自家消費する手法として、いわゆるネットメータリングNet Meteringによる太陽光発電需要の継続、拡大を期待しています。また太陽光発電施設の増加にともない、O&M (運用と保守)の市場も拡大していますので、両方にビジネスチャンスがあると考えています。IT企業のマレーシア進出事例
会社名:エナジー・ソリューションズ株式会社
サービス名:ソーラーモニター
販売代理店:TK International Sdn Bhd
2015年、TK International Sdn Bhdはソーラーモニターを提供するエナジー・ソリューションズ株式会社 と販売総代理店契約を締結し、マレーシアでのサービスを開始