MSCステータス解説 2018年版

(申請手順とメリット)

マレーシアに進出されるIT企業にとって、MSCステータスは非常に魅力的なプログラムです。MSCステータスを実際に取得したIT企業により、2018年現在のプログラム内容、メリット、手続きについて解説いたします。

TK International Snd Bhdは2016年にMSCステータスを取得しました。マレーシアではよくあることですが、管轄するMDEC(マレーシアデジタルエコノミー公社)のウェブサイトを見ても申請に必要なことが詳しく書いておらず、申請手続きを始めてみて分かることが多かったので、MDECのオフィスがあるサイバージャヤ(Cyberjaya)に何度も自分で通って、担当官からヒアリングして申請書類を準備しました。

何度もMDECを訪問したおかげで、MDECとのコネクションができ、その後も2017年にMDECと共同で東京開催のセミナーを開催するなどビジネスの協業関係が深まっています。

1. 現在のMSCステータスは4つのTierに分かれている


2015年1月にMSCステータスのプログラム改変があり、4つのTierに分かれました。
ネット上には2015年1月以前の制度内容に基づいてMSCステータスの説明が書かれている記事が残っているので注意が必要です。

「MSC4STARTUPS」はスタートアップ向けとなりますので、通常、日本からマレーシアに進出される企業はTier1~3が対象となります。基本的にTier1は2015年1月以前のMSCステータスと同じ条件となっています。新設されたTier2、Tier3を取得する場合はオフィスの場所の条件が緩和される代わりに、得られるメリットが少なくなります。

Tier1は2015年1月以前と同様に、オフィスの場所はMSC指定ビルディングに入居することが条件となっています。Tier2はMSCサイバーシティ/センターエリア内の商用ビルであれば入居できます。Tier3にいたってはオフィスの指定条件は免除されます。MSC指定ビルはこちらで確認できます。

MSC指定ビルはほとんどの主要地域にあります。新しい対象ビルも次々とオープンしています。オフィスの条件面で特に問題なければTier1の取得を目指すということになります。

2. BOGとは?MSCステータスのメリット(特典)

MSCステータスの取得した企業には、マレーシア政府より10の特典が提供されます。
MSCステータスの取得企業に提供される特典のことをThe MSC Malaysia Bill of Guarantees と呼んでいます。(略称はBOGです。) MDECのウェブサイトにはTierごとに許諾されるMSC Malaysia Bill of Guarantees (BOGs) が記載されています。(出展)
1. ワールドクラスの物理インフラ並びに情報インフラ
2. マレーシア人ならびに外国人知識労働者の無制限雇用
3. マレーシア資本要件を免除することにより、自由な企業所有形態
4. 海外からの資本金導入ならびに海外からの借り入れ自由
5. 最高10年の100%法人税免除、または最高5年の投資減税。マルチメディア機器の輸入免除
6. 知的財産権の保護及びサイバー法
7. インターネットの検閲なし
8. グローバルに競争力のある通信料金
9. 主要企業にはMSCマレーシア関連のインフラ・プロジェクトへの入札権
10. MDECによるワンストップ・エージェンシーサポート
BOGの中でもMSCステータスの特典として魅力的な内容が「マレーシア人ならびに外国人知識労働者の無制限雇用」と「最高10年の100%法人税免除、または最高5年の投資減税」だと思います。
MSCステータス取得が承認された後、MDEC e-Xpats Centreに出向いてオリエンテーションを受ければ、就労ビザを申請することができるMSCステータス専用のWebサイトを利用できるようになります。またこのセンターはMSCステータス取得企業専用の窓口ですので、あまり混雑もせず就労ビザを申請することができます。

3. 申請前に検討すべきこと

MSCステータスを申請するまえにどのような内容の事業でMSCステータスを取得するのかを検討する必要があります。申請する内容や条件が変わってきます。MDECでは事業内容のことを「クラスタ」(Cluster)と呼んでいます。主なクラスタはINFO TECH、Global Business Services、Creative Content Technologiesの3つです。

4. INFO TECHクラスタ(Cluster)

クラウドサービス、ビッグデータ分析、IOT、Eコマースなど、おもに情報を扱う領域がINFO TECHクラスタです。
このクラスタでMSCステータスを申請する場合、該当するITサービスを自社でデザインや開発などを行っていることが必要となります。単に、他社の製品の販売を行っているというだけでは申請が通りません。また日本で自社開発していたとしても、MSCステータスを申請するにはマレーシアで何らかの開発を行う必要があります。つまり、日本で開発したものをマレーシアで販売するというだけでは申請が通りません。

マレーシアでITサービスなどを販売するだけでは、マレーシアで雇用も生まれにくく、マレーシアの人材にノウハウが残らないためとみられます。マレーシアで免税などの特典を得ることの引き換えに、マレーシアにもメリットがあるということが基本的な考え方になっています。

それではマレーシアでどのような開発をすればよいのか、この辺りははっきりとしたガイドラインはありませんが、MDECの担当官に説明してアドバイスをもらうことは可能です。

MDECの資料で定義されているインフォテック

A. 以下の分野で設計、開発、保守およびマーケティング活動を行う企業

1.ソフトウェア製品
一般的なビジネスアプリケーション。モバイルプラットフォームやクラウドプラットフォームを含むあらゆるプラットフォームのCRM / ERP /アカウンティングなど
製造/セキュリティソリューション/ワイヤレス&固定通信/組込みソフトウェアなどの垂直産業向けの特殊アプリケーション

2. ハードウェアテクノロジー製品とアプリケーション:
インテリジェントコントローラ/ RFID /セキュリティソリューション/ワイヤレス&固定通信/ SoC設計/ IC設計
電子ハードウェアコンポーネントまたは完成品(RFID /スマートカード)に焦点を当てたスペシャリストデザイン会社

B.以下のようなインターネット上でサービスを提供している会社
アプリケーションサービスプロバイダ、電子商取引サービスプロバイダ、 ウェブベースの取引プラットフォーム、電子政府ベースのサービスプロバイダ

5. Global Business Servicesクラスタ(Cluster)

MDECでは略称でGBSとも呼ばれています。このクラスタで対象となる事業は主に3種類です。
1.コールセンター、データセンターなどビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業
2.ITヘルプデスク、デスクトップ・サーバーサポートなどITアウトソーシング事業
3.ビジネス調査・分析、エンジニアリングプロセスデザインなどKnowledge Process アウトソーシング事業

Global Business Servicesクラスタは比較的大規模なアウトソーシング事業をグローバルに展開する企業を想定しています。実際、Global Business Servicesクラスタで取得申請する場合、5年間で50人以上の従業員を雇用することが条件となっています。
日系企業ではトランス・コスモス、Veltra MalaysiaはこのクラスタでMSCステータスを取得しています。

MDECの資料で定義されているグローバルビジネスサービス
グローバルビジネスサービス(GBS)は、シェアードサービス&アウトソーシング業界の高度に進化したモデルです。 GBSは日々の取引活動だけではなくて、より広い範囲でより高い価値を提供するためのビジネスサービスを提供します。
 
ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO) インフォーメーション・テクノロジー・アウトソーシング(ITO) ナレッジ・プロセル・アウトソーシング(KPO)
HRやF&Aなどのトランザクション型内部ビジネス機能、マーケティングおよびコンタクトセンターサービスにおける顧客関連サービスを含むフロントオフィス機能 プログラミング、テクニカルサポート、デスクトップ&サーバサポート、ネットワーク&セキュリティシステムなどのトランザクション型IT&IT関連機能 高度に複雑な付加価値の高いプロセスと、学位、幅広い教育背景、ドメインまたは専門分野の特定かつ高度な知識、5年以上の経験と月平均RM8000以上の専門家が必要です。
追加の条件

HEADCOUNT GBS 5年以内に50人のナレッジワーカー*1
または給料RM1万以上ナレッジワーカー20人の雇用
EXPORTS
GBS + DATA CENTERS
MSCステータスの5年目までに70%の輸出
LOCATION
GBS + DATA CENTERS
指定地域内に投資* 3の70%
INVESTMENT
DATA CENTERS
5年間でRM1000万の資本支出(CAPEX)
<注意事項>

1. 2年以上の経験を有する高等教育機関(任意の分野)またはマルチメディア/ ICTの卒業生またはマレーシアでは普及していない知識ベースのスキルを持つ外国人労働者からの3次資格を有する個人。

2. マレーシアの多国籍企業にサービスを提供するローカルのGBS企業は、「輸出」と呼ばれる。 割合は、MSC指定地域における承認MSCマレーシア活動のCAPEXとOPEXの投資価値の組み合わせに基づく。

3. 割合は、MSC指定地域における承認されたMSCマレーシア活動のCAPEXとOPEX投資価値の組み合わせに基づく。

6. Creative Content Technologiesクラスタ(Cluster)


MDECでは略称でCCTとも呼ばれています。このクラスタで対象となる事業は主にデジタルコンテンツの制作が対象となります。アニメーション制作、バーチャルリアリティのアプリケーションもこのクラスタの範囲となります。

MSCステータスを申請するには、上記のどのTierにするのか、どのクラスタで申請するのかを決めておく必要があります。
MDECの資料で定義されている CREATIVE CONTENT AND TECHNOLOGY の定義
デジタルコンテンツの作成、配信、および強化に関わる活動と技術。 これには、知的財産の開発、生産、集約、流通およびマーチャンダイジング、ならびに当該活動を支援する関連技術ツール、サービスおよびプラットフォームの供給が含まれる。

これらの活動には以下が含まれるが、これらに限定されない。
・デジタルコンテンツIPの制作
・制作プロセス(インタラクティブコンテンツを含む)
・ポストプロダクション:デジタルオーディオとVisual EFX / Computer Graphics(CGI)ベース
・2D / 3D、バーチャルリアリティ、シミュレーション、拡張現実感などの技術を使用したアニメーションとデザイン
・コンテンツの集約/パッケージング
・コンテンツの配信
・ライセンシングのためのIPの強化
 

7. MSCステータスの取得申請


さて、いよいよMSCステータスの取得申請の話です。

1.オンラインで申請書の送信

・オンライン上のフォームに必要事項を記入
・会社設立に関するフォームを添付

オンラインで申請書を送信して、承認されますと申請企業の担当としてビジネスアナリストがアサインされます。
後々このビジネスアナリストは非常に大事な役目を持つことになります。それは、最終的にこのビジネスアナリストが申請企業に代わって、MSC取得の可否を判断するApproval Committeeのミーティングでプレゼンすることになるからです。

2.具体的な事業計画内容の提出

ビジネスプランやファイナンシャルプランなど詳細情報をフォームに記入して送信します。
このフォームに結構時間がかかります。場合によっては何度も提出しなおしになることもあります。どのような内容を用意すれば申請が通りやすくなるのかについては、個別の事情がありますので、お問い合わせください。

3.レビュー & 承認

2の書類の準備ができたどうかはビジネスアナリストが判断します。ビジネスアナリストがそのように判断した場合にはMSC取得の可否を判断するApproval Committeeのミーティングにて審議を受けることになります。
MSCステータスの取得が承認されますと、eTouchと呼ばれるMSCステータスを管理するためのウェブサイトにアクセスできるようになります。また、ビザ申請についてはMDEC e-Xpats Centre 専用のサイトを利用することになります。eTouchの概要ビデオはこちらです。



マレーシアITパートナーズでは、MSCステータス取得をサポートいたします。

・MDEC担当官とのミーティングアレンジ
MSCステータスの申請を始めるにあたって、担当官からプログラムの内容やメリット、その手続き方法などレクチャーを受けることができます。

・MSCステータス申請サポート
MSCステータスの取得には短くて3か月、長い場合は1年かかっても取得できない場合があります。IT事業者によって事業内容やビジネスモデルが異なるため、MSCステータスの申請内容は会社によって異なります。MDEC側にビジネスアナリストに適切に内容が伝わらない場合は時間ばかりかかることになってしまいます。事前の準備と申請内容の不備や行き違いを削減することで取得にかかる時間と余分な手間を削減することができます。

まずはマレーシアITパートナーズにお問い合わせください。